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不器用な男のクリスマスラブストーリー【中編】

コラム コラム-エッセイ

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男性から何の連絡もなく時が過ぎていく。自分も興味本位に

「その後どうなったんですか?」

と男性に聞くこともなく、相談されたら答えることに徹していた。人間関係というものは不思議なもので、頻繁に連絡を取り合う時もあれば全く連絡しない時もある。

連絡がなくなり、そのまま自然消滅になることもあるし、忘れた頃に連絡してくる人もいる。

1日は24時間だから、限られた時間の中で人は誰と連絡するか、会って話すか決めているんだ。

そんなある日、男性からメールがきた。

「芸人をやめて田舎に帰ることにしました」

と……。自分はメールの内容に驚き

「あれほどお笑いが好きだったのに何でお笑いをやめちゃうんですか?」とメールを送る。

連絡がなかった間に男性の心境は変化していたのだろう。誰でも口だけなら凄いことは言えるし、始める前に挫折を経験していなければ、自分に自信を持って挑戦することができる。

しかし必ずしもうまくいくとは限らないし、自分の思っていた通りの結果にならない時がある。

挫折を味わい精神面が弱いと乗り越えられずに終わってしまう場合がある。

男性はトリオでお笑いを目指したのだが、ひとりがネタ見せの時に無断でこなくなり、そのまま行方不明になった。

残った2人で再スタートしたのだが、最終的に解散し、ピン芸人でやっていこうとした矢先だった。男性から

「もう辞める決意はしました。バイトも今月で辞めることも言いました」

と連絡があり、自分は何度も

「まだ諦めずにやりつづけた方がいいんじゃないですか?」

と男性を説得しようとしたが、男性の決意は変わることはなかった。

男性を説得しても無理だと感じた自分は、これだけは知りたいと思った。それは男性が女性に想いを伝えたかだった。

このまま女性に避けられ、自分の想いも伝えずに田舎に帰ったら男性の性格上後悔することになるだろう。自分は男性に連絡をする。

「もしもし、好きな娘に告白はしたんですか?」

「いいえ、してないです」

「だったら、例えだめでも告白し方いいんじゃないですか?」

「……」

「自分はだめだと分かっていて告白したことがありますよ!」 

「えっ!」

自分は高校2年生の時に恋をした時がある。出会いは自分の通っていた高校の文化祭の時で、団体で行動することが嫌いだった自分はひとりで文化祭を楽しんでいた(今も団体行動は苦手でひとりで行動する)。

文化祭は盛り上がっているわけでもなく、ひっそりと行われていた。演劇を観ようとして体育館に行っても、お客は数少なくこれが興行だったら赤字になってしまうだろう。

それを自分はひとりで観ていたのだが、演劇が終わってから自分は目を奪われてしまうことになる。

体育館全体に大音量でF1のテーマソングが流れ、同じ衣装を身にまとった女性たちがかけ声と共に踊り出す。

お客の歓声もないまま彼女たちは踊っていき、体育館を見渡せば誰も座っていない椅子だけが目につき、元気に踊れば踊るほど、自分の感情は強烈な空しさがぐるぐると回っていく。

彼女たちは全く観客がいない中、どんな心境で踊っていたのだろうか。自分と同じ空しさを抱いているんじゃないのか。

それとも勝手な想像だが、大勢の観客の前で踊りたい希望を抱いていたんじゃないのか。

それともバトン部に入ったけれども、文化祭でお客がいない。そんなはずじゃなかったと心の中で叫んでいるのか。

それとも……、誰もいないけれど、ひとりでも観ている人たちがいる限り、私たちは踊る。そういう精神でやっているのか。

想像はいろいろな角度でスポットライトが当てられ、どんな心境で彼女たちが踊っていたのか知るよしもなかった。

また踊っている個々のメンバーによっても心境は違うだろうし、想像はあくまでも憶測であり、どれが正解とは言いがたいだろう。

当時、文化祭が近づいた頃、ある舞台集団の座長から

「5分の時間を与えるから舞台で何かやってみないか?」

と誘われていた。たった5分の中で自分が何を演じるか考えていた最中だったのもあるが、お客の数の少なさが、まるで自分自身に突きつけられているように思えた。

バトン部が踊っている。ほとんど誰もいない体育館の舞台で踊っている。ひっそりとした森の中にトトロは住んでいる。

トトロは全く関係ないが、その姿を見て例え観客がいなくても、その時の5分を精一杯やろうと決めさせる感動があった。

自分の目から見て彼女たちは一生懸命さを感じさせてくれたのだ。リズミカルにミュージックは鳴りつづけ、リズムに乗って彼女たちは踊っていく。

ロングヘアーの少しぽっちゃりした娘がやけに気になり、自分はその娘ばかり目で追っているのに気づいた。

誰かがしていることを、必ず誰かが見ているってことあるでしょ。そのしていることが評価されたり、時には人間性を疑ってしまったりすることもあるけれど、文化祭でのバトン部の踊りがきっかけで彼女に興味を持ってしまった。

人間思いつめると何をするか分からないと言うが、これを期に自分は昼休みに意味もなく校内を歩き回り、彼女に出くわすんじゃないかと期待した。

たまたま彼女に出会ったりすると心の中でガッツポーズをし、それがエスカレートすると帰りの下校時にも出くわすんじゃないかと勝手に運命的なものを期待し始める。

自分のクラスにバトン部がいて、昼休みに先輩に会いに後輩がよくきていたのだが、その集まりに彼女もいて、クラスメイトのバトン部に敬語を使っていたことから、彼女は高校一年生だと知った。

それにしても、よくクラスに彼女も含めてバトン部の後輩がきていたから、期待は突如として妄想に変わっていった。もしかしたら彼女は自分に興味を持っていて、わざとこのクラスに集まるように先輩に頼んでいるんじゃないか。

妄想が進化すると思い込んだ当人は真剣で、周りから見ると滑稽に見えておかしくなってしまう。

自分はバイトで貯めたお金で動画を撮影できるカメラを購入し、毎回自宅にゲストと称して友達を呼び、カメラで撮影をしながら、友達に自分の恋の相談をし始めた。 

中編・完

今日のうさぎ 4 / Today's rabbit 4